柏市の重症心身障害児者施設:光陽園を訪問

玄関ではくじらなど海の生き物の絵が迎えてくれます。この利用者さん達が入れない海の景色を見せてあげたいという想いから海の絵となっています。

1.県内に6か所しかない受入施設

柏市にある重症心身障害児者施設の光陽園を訪問しました。

船橋市周辺でも同様の施設の必要性があり、市が県に設置を求めています。県も必要性は認識しているが市町村がリードして欲しいというお互いがお見合いの状況にあります。背景には医療者を集めること、経営が困難な事から公的資金をどこがどのように出していくのかということがあります。

まずは現場を知らなければという想いで、今回柏市酒井根(南柏駅からバス)に足を運びました。

重度の肢体不自由と知的障害のある重複障害児・者は制度の谷間の存在で厳しい環境におかれきた歴史があります。

こうした中でも、千葉県内では4つの重症心身障害児者施設が設置され、また国立病院機構の下志津病院と千葉東病院の2つの病院が受入施設となってきました。そのほとんど国や地方自治体が主となり運営されています。県内でも民間で運営されているのは、こちらの光陽園と聖母療育園(旭市)のみです。

現在、千葉県内全体で150人ほどの待機があります。

千葉県内では人口の多い千葉県北西部に重症心身障害者施設がなく、平成7年に親の会が中心となり設置要望が高まり、その後東葛6市(柏、松戸、野田、流山、我孫子、鎌ヶ谷)が動き始めました。

平成20年に療養型病床であった現在の施設を重心施設に転用する方針が表明されましたが、その後当該医療法人が開設を断念。計画を継続するために、平成26年9月に社会福祉法人創仁会が立ち上がり、建物を買い受け、急ピッチで開設準備を進め、平成26年4月の開設という、大変な苦労があり、現在に至ります。

2.光陽園の現状

現在は86床のうち84人が入所しており、ショートステイは感染症対策の関係で現在休止中です。入所者の年齢は4歳~65歳で、平均年齢30.8歳となっています。

入所者のうち東葛6市が3分の2を占めており、6市以外では船橋市から5人を受け入れています。

大島分類(https://www.normanet.ne.jp/~ww100092/network/inochi/page1.html)でいうと全員が1~4で1は63人(74%)となっています。

医療的ケアが必要な人が多く、全介助が必要な状況です。てんかんを合併しているものも69人と8割に上り、スタッフもかなり気を張ってケアをしている様子が伺えます。また普通食の人はいません。経管栄養は44人(52%、うち胃ろうは30人)です。

本館の2,3階が居住スペース。
2階には院内学級があり県立特別支援学校の先生達が子ども達に学びの機会を提供します。
車いすの入所さんのために低い位置に飾り付けがされています。

医師看護師介護士の確保に苦心しています。人的スタッフを供給してくれるバックアップとしてバックに病院などがあれば良いとのことでしたが、本施設は単独の施設なので人材のリクルートは特に大変とのことでした。

現在、千葉県全体で150名ほどの待機があるが、在宅ケアを続けたいという親御さんも多く今すぐにという緊急でないものの数字も含まれているとのことでした。

親御さん達の願いとしては、自分たちがしていたように子ども達を大切にケアして欲しいという想いが強いことから、親御さんとスタッフとの信頼関係や施設の透明性・開放性に特に気を付けている様子でした。この施設が親の会の要望によって出来上がってきた経緯もあり、親御さんの行事への参加や施設への訪問は多いとのことです。

また市立松戸病院で医師をされてきた中村仁現施設長の長年の人的ネットワークにより、リハビリ、検査、栄養に関する専門家を抜擢し、他では受けられない手厚いケアとサービスを行なえているとのことです。

リラックスできる空間のスヌーズレン

施設内を見学させていただきましたが、デザインによる温かい雰囲気づくりを大切にされていると感じました。スヌーズレン(*)や新たにつくられたガーデンテラスなど、入所者・スタッフ・地域の方がリラックスできる空間づくりに気を配っていることが印象的でした。スタッフは全介助であることから心身の負担も重いことから、休む時はきちんと休むということを徹底しているとのことです。

*スヌーズレンとは

最初の10年は入所と外来診療を中心に整えてきたので、次の10年はデイサービスや在宅支援をやる拠点づくりをしていきたいと積極的なお話しもありました。

3.所感・葛南地域での整備に向けた課題

約2時間半ほど、お邪魔をさせていただきましたが、同様の機能を船橋周辺地域で整備しようとするのならば、

  • リードする人材の確保とリードする組織を明確化すること
  • 医師・看護師・介護士をはじめとした人材確保
  • 県・基礎自治体の財政的な支援
  • 長期入所と在宅支援・レスパイト利用とはスタッフ・施設を分けて考えるべきであること

といった事が明らかになったと思います。

行政としてのニーズがあることは確かですが、今後は利用者・ご家族・関係団体などの具体的なニーズをしっかりと掘り下げていくことが重要であり、今後も調査研究を進めていきます。

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この記事を書いた人

つまがり俊明

1977年6月生れ / 船橋市出身 三咲小→御滝中→鎌ヶ谷高校→明大→ベンチャー企業→総務省→神奈川県庁→松下政経塾→船橋市議会議員

~多様性を力に変えていく社会へ~ モットーは「着眼大局着手小局」