昨日、文教委員会にて1人1台端末の整備、ご自宅でWi-Fi環境などの通信環境が無いご家庭の支援策に関する補正予算の審議が行われました。
端末整備、自宅の通信環境整備ともに多くの疑問が残るやり取りでした
船橋市議会の委員会はその時のテーマに沿って議論を行います。今回は提案された補正予算(ICT端末に関するリース料3,300万円、家庭内学習の通信環境の支援1.1億円)次の資料をもとに質疑をしました。
当初教育委員会から示された資料は次の2点だけです。これを深掘りしていくだけで大変な困難を伴いました。今回の質疑の様子は6月4日頃から予算決算委員会文教分科会に録画動画もアップされます。
funabashi.gijiroku.com
以下、その中の主なやり取りです。
1.一人一台の端末整備について
- 1人1台の整備に向けての補正予算について伺う。今回は3,300万円しか予算が提案されていないが、目指すのは全小中学校生徒に一人一台。49,000台で良いのか?
- その台数になる。
- 全体像を明らかにしたい。33,000台の端末にかかるトータルコスト約34億円その内訳は?
- 国のイニシャル補助4.5万円×33,000台=14.85億円
- 3,300万円×12か月×5年=20億円(市負担)、毎年4億円は市負担。
- 令和2年3月の議会質疑で明らかになったスケジュールに変わりはないのか。残りの端末はどうするのか。早めることはできないのか。
- 本年3月:3,360台の導入予算(490万円)を確定(既存のものPC4,500台、400~500台/年)
- 令和3年2月:GIGAスクール構想の校内LAN整備事業(12億円)が終了
- 令和3年3月:33,000台を導入 ←3,300万円の今回の補正予算はこのぶん
- 以上のように基本的に変わりは無い。残りの端末は令和4年度末までに導入を検討したい。
- 端末としてはどういうものが想定されているのか。Google、iPad、マイクロソフトといったもので良いのか。また自宅へ持ち帰れるのか。学校専用か
- それらの機種から選定を検討中。学校使用を原則だが緊急時は持ち帰って自宅学習ができる事を考えたい。
- とても大きな事業である。本来、端末はツールである。どういう授業をする、だからこういった端末が良いというのが本来はスジだと思うが、端末を使ってどういう授業をするのか、活用の研究は充分に行われてきたのか。どういった蓄積があるのか?
- 古和釜中(3年目)、坪井小(5年間)にてiPadを入れて実践を重ねてきた。1人1台あると意見をお互いに見合うことができる。意見が言えない子供達も言い易い環境ができる。主体的、参加型の授業になっていく。またダンスや音楽なども創作活動ができる。これらの実践を重ねた先生が端末選定のメンバーにも入っている。
- 昨日土佐塾中高の先生方の授業の仕方についてお話しを聞いた。私立にも教えてを乞うべきである。また指導的な立場の先生よりも若手によるプロジェクトチームを創ってはどうか。
- あらゆる先進事例を吸収していきたい。
- 端末選定にあたっては6年後の端末更新の時も見据えて長期的なコストを考えおいて欲しいが、そういった視点も含めて検討して欲しい。また現場の先生方の負担が少なく、かつ円滑に導入できるように、サポーター配置支援事業を活用していくべきではないか。
- 何とか準備をしている。
- 学習障害支援装置事業、遠隔学習機能強化事業にはなぜ手上げをしないのか。
- 遠隔学習を進めるためのカメラ、マイクの環境は目途が付いている。学習障がいの支援装置事業については今後研究していきたい。
- 校内LAN整備を早めることはできないのか。
- 82校の設置作業は膨大。
- 来年度になるのは小学校1,2年生なのか。
- 上の学年から順番にやっていく。
2.双方向オンライン授業の実現に向けたモバイルルーターやタブレッド端末の無償貸し出し
- 機種は何を貸し出しているのか
- 千葉工大iPadミニや既存のウィンドウズ機種。
- 全体のスケジュール感を教えて欲しい
- 中3年生5月22日に497台を学校配布済み、順次配布開始。6年生の申請が6月2日に集まる。順次その他の学年への支援を厚くしていく。
- ニーズに対して行き渡っているのか。保護者アンケートの結果ではどうなっているのか。
- 4月に行ったアンケートの回答は通信環境が無いが8.2%、学習用端末が無いが18%。アンケートの回答率は9割弱であり、申込ニーズはもっとあると思う。そこは学校も再開されたので、さらにきめ細やかに対応していきたい。
- 通信容量はどれくらいか性善説に立つのか閲覧制限はどうなっているのか。
- 7G/月。端末に閲覧制限をかけ、モバイルルーターは配布した端末のみにつながる形になる。
- 岐阜聖徳学院大学の2018年調査によれば大変衝撃的なことに、学習用PC一台あたりの児童生徒数順位1,672位(全国1738中)である。船橋の端末整備が遅れてきた要因をどう考えるのか?
- 中学校の電子黒板普通教室への配置、校務支援システム、またスクールカウンセラーの配置など他の優先順位を決めて行ってきたというのが背景。ようやく今回取り掛かったところ。
3.所感
各委員からも多くの多面的な角度からの質問があり、今後の課題も明らかになりました。
(1)50億円を越える巨額の事業費
- 1人1台整備に関する総額45億円(5年間で)のトータルコストが初めて明らかにされた。これに加えて校内LAN整備12億円、通信費1,000万円/年がかかる。その内訳の概要は33,000台(国のイニシャル補助4.5万円/台が14.85億円、ランニングコストは20億円で全額市の負担)10,000台超は整備も含めて自前で初期投資4.5億円、5年で6億円となる。
- また自宅の通信環境整備の支援(月7Gのモバイルルーター、タブレットは既存のものを貸与)の今回の予算ベースであれば概算で1.1億円/1,780台/10か月(6月~3月)≒6,200円/台・月。必要数を全小中学校の生徒の1割と仮定しても、49,000人×10%×6,200円×12か月=3.6億円/年(全額市独自の負担、国の補助無し)となる。
(2)ICT教育の蓄積
- 端末を活用した授業研究の蓄積が充分ではないのではないか、その教育内容が明確とは言えない。端末を活用した授業が双方向オンライン教育のベースとなるため、その方面での遅れを早急に解消する必要がある。
(3)コロナ対策に間に合うには計画の前倒しが必要
- 1人1台端末はコロナなどの非常時には自宅学習用として持ち出しも想定しているというが、コロナ第2波に備えて可能な限り前倒して準備を行うべき。
(4)端末整備の全体像が必要
- 今後全小中学生に1人1台とするためには残りの1万台を整備する必要があるとのことであるが、いつまでに何台整備するのか、見通しを示す必要がある。
(5)自宅での通信環境整備の支援の全体像や見通しを示すことが必要
- 自宅での通信環境整備(タブレット端末の配布含む)の支援についてもまずは中3、小6の対応を進めているが、その他の学年がいつまでに行き渡るのか、全体像や見通しを示す必要がある。
(6)自宅での通信環境整備についてきめ細やかな支援が必要
- 自宅での通信環境整備(タブレット端末の配布含む)の支援については、通信環境が整っていない家庭から支援を行っている。一方で通信環境があってもタブレットなどの学習に適した端末が無い家庭への支援、通信環境があっても通信容量が膨大になった場合の支援についてどうするのか、見通しを示す必要がある。
(7)双方向のオンライン授業を進めるためにハードとともにソフトも急務
- 基本的には端末、通信環境が一定程度整わなくては双方向オンライン教育が難しい状況であり、ハードの準備と共に早急に授業研究やホームルームを試験的に導入するなど進めていく必要がある。
(8)それぞれの事業を一体として進めて効率化を図るべき
- 一人一台端末と家庭内学習環境支援とがリンクをしていないのではないか。
いろいろと初めて明らかになることがありました。各家庭の通信環境の支援については本来であれば4月に議会で議論がされるところですが、緊急事態下で議会開催が見合わされました。やむを得ない状況だったとはいえ、やはり議会や委員会をきちんと開いて多面的に細やかに議論することの大事さを痛感しました。
総論としては、双方向オンライン授業が始められるとしても中3や小6からであり、いつからという事が明確には見通せない現状です。学校、教育委員会としても校内の消毒作業やカリキュラムの変更など手一杯だとは思いますが、コロナの第2波はいつ来るか分かりません。
学びの機会を止めないためにも、これらICT教育の進捗状況を今後も追いかけていきます。そのためにも皆様からのご意見や学校・生徒さんの様子などの情報提供をお待ちしています。