ソーシャル・インクルージョン(社会的包摂)とは 障がいの現場を通して


昨年、政府の民間議員に選ばれた女優の菊池桃子さんが「ソーシャル・インクルージョン」という発言をしました。聞き慣れない言葉ですが欧州などでは社会福祉の中心となっている考え方です。

「全ての人々を孤独や孤立、排除や摩擦から援護し、健康で文化的な生活の実現につなげるよう、社会の構成員として包み支え合う」ことで、反対の言葉は「社会的排除」です。

滋賀県湖南市や千葉県内の農場実習で感じたことをレポートします。

「この子らを世の光に」

戦後の障がい福祉施設の原型を創ってこられた故糸賀一雄先生ゆかりの湖南市地域そして近江学園を訪ねました。

ここは「発達支援システム」という教育や福祉といった縦割りの壁を乗り越えた全人的なケア、そして発達障がい・知的障がいなどの早期発見に力強く取り組んできた地です。一説には就学前で発達障がいの可能性など「気にかけなくてはいけない子」は20%にも上るとも言われ、早期の対応が重要とのことです。戦後まだまだ国内は救貧的、恩恵的な福祉思想のもとにありました。

そうした中で人間誰もが発達する可能性があり、その潜在能力を引き出していき人格的発達を促すという「発達保障」という哲学と実践を重ねてきたのが、糸賀一雄先生とゆかりの方々です。施設や市役所でお話しを聞いてもその歴史に対する誇りと責任を感じます。

人間大事

9〜16時まで障がいのある方々と一緒に千葉県内の農場で汗を流してきました。指導員1人に対して、障がいのあるスタッフが3人。総計20名ほどの葉物中心に栽培しているハウスの農場でした。

「新人」の私に10代のスタッフが丁寧に、野菜の手入れ、収穫から出荷の仕方まで教えてくれました。その人なつっこい笑顔に囲まれる中で、人間大事という基本をあらためて思い返しました。

ある指導員の方の言葉が印象的でした。「ここの就業定着率は99%。農業はケアの要素もあり、ここに来ると落ち着くスタッフも多い。何より、軽んじられたり、低賃金でこき使われたり、そういう事無く人としての尊厳を大切にされる。なかなかこういった場所は無いんですよ。」

船橋市内でも特別支援学校の卒業後の就職先を見つけるのは大変です。また市内の企業でも障がい者を雇いたいのに雇えないという声も聞きます。農場に限らず、多様な就労の場を創出していく必要があります。

つまがりの考え「時代を取り巻く三つの赤字」

私は「政治の役割」とは陽の当たらないところに光を当てることにあると思っていましたが、今回の研修を通して考え方をあらためました。人は存在自体が素晴らしい価値であり、その輝きを曇らせる様々な社会的な阻害要因(障がい)を取り除いていくことへの挑戦こそ、政治の本質的役割だと気付かされました。

私は日本を取り巻く構造的課題として三つの赤字があると感じています。障がい福祉や保育や介護など生活の「ケアの赤字」、これらのケアサービスを充分に支えられない「財政の赤字」、そして財政の赤字は政治や行政への不信感や不参加という結果であり、「民主主義の赤字」です。

現場の困難を知り、目の前の問題に取り組んでいくとともに、私達の船橋のまちづくりに市民の皆さんがもっともっと参加をしていくための働きかけを加速していきます。


教えて!つまがりさん!

10代の私は18歳選挙権に疑問を持っています。学校内でも政治や社会問題に自分の意見を述べる人は少ないです。そんな中で先進国にそろえて選挙権の年齢を引き下げる意味があるのでしょうか。

ご相談者ご自身は政治や社会への関心は強いのだろうと思います。しかし周囲の関心の無い素振りを憂いているのではないでしょうか?それは自分も高校、大学の学生時代に同様な思いをしました。

政治や社会の公論を話す場を求めて、学生時代に政治家事務所のインターンシップなどもしました。日本では高校生に限らず、多くの世代の方々が「政治」やシリアスな社会問題を人前で話すことをタブー視する傾向があります。人が多く集まる場で「あんまり難しい話はするな!」と言われながらも、めげずに時には下手な冗談も交えながら自分なりのメッセージを伝えています。

友達や家族や先輩後輩と自然体で政治や地域や社会の問題が話せる、お互いの意見を尊重し合いながら意見を素直に言い合えるようになれば、船橋も日本ももっともっと良くなります。主権者教育などシステムも大切です。

ですが世の中を前進させるのは1人1人の日々の言動だとも思います。「雨だれ石をうがつ」ではありませんが、私達の日常でそんな話を少しずつ広げていきたいですね。そういった観点からすれば、18歳選挙権は高校生のみならず、今の20歳以上の市民国民も含めて政治参加をあらためて考える良ききっかけだと思います。


つまがり事務所リレー日記

40代二子のパパ

私は3年前に障がい者手帳を取りました。二人の男の子のパパであり、また会社を経営する立場でもあります。網膜色素変性症という指定難病だそうです。遺伝性でもあり今のところ、治す方法はないそうです。視界が曇りガラスのようになり、視界がどんどん狭くなってきます。人によっては失明するそうです。

日本には70万人ほどの人がこの病気になっています。船橋でも相当な人数がいるはずです。会社では障がい者雇用を進めていこうと思い、研究・調査の日々を続けています。

全国の障がい者施設を見て歩き、目の不自由な方のより良い職場づくりや暮らしていく環境づくりやまちづくりをどうすればいいのか、今検討中です。

子供達ももしかしたら発病するかもしれないし、1人でも目の見えない方を支援できたらと思い、頑張っています。船橋ではまだまだ、視覚障がいの方への取り組みが行き届いていない部分が多々あるようです。グループホームやマッサージを取り入れたディサービスや支援事業を応援するなど、自分自身でできる範囲のお手伝いをしています。もし、明日から目が見えなかったらどうしますか?一人でも多くの人に手を差し伸べられる故郷、船橋にしていきたいものです。

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この記事を書いた人

つまがり俊明

1977年6月生れ / 船橋市出身 三咲小→御滝中→鎌ヶ谷高校→明大→ベンチャー企業→総務省→神奈川県庁→松下政経塾→船橋市議会議員

~多様性を力に変えていく社会へ~ モットーは「着眼大局着手小局」