コロナワクチン接種報道に関する違和感(上)~船橋市の接種スピードについて~

高齢者におけるワクチン接種率の急速な向上の一方で、突然の国からワクチン供給量の減少と見通しが立たなくなり、自治体の集団接種会場やクリニックでのワクチン予約が停止する状況にあります。多くの市民の皆様から、叱責や不安の声をいただいています。

市民の命を預かる最前線に立つ基礎自治体(市町村)として、もちろんあらためるべきところをあらためていかなくてはいけません。一方で、国が上で自治体が劣っているというような偏見が一部メディアにも見受けられます。首長たちも一種の災害対応的な危機管理を進めなければならず、国に振り回されていることをなかなか主張できない状況にあります。

旧自治省4年、県庁2年の行政経験、市議10年の政治経験から見た国と地方自治体の関係性という観点、そして民間ベンチャー2年、現在障がい福祉現場で週2回エッセンシャルワーカーの皆さんのお手伝いをさせていただいている、民間・現場といった多様な視点から現在のワクチン接種報道に関する違和感をお伝えします。

船橋市のワクチン接種は遅いのか。

全国一早いとは言えません。人口規模の大きい自治体や高齢者数が多い自治体では若年層への接種が遅れる傾向にあるのは事実です。反対に離島や小さな町村ではそもそも医療過疎地でありコロナ感染した場合のリスクは極めて高く、高齢者のみでは効率的な対応ができないので、進む傾向にあります。小さな自治体は日頃から住民との距離も近く、人的ネットワークでのつながりがあり、緊急の対応において迅速であることは、昨年夏の10万円給付事務でも明らかになったところです。

船橋市内のワクチン接種状況
船橋市内のワクチン接種状況

では船橋市の現状はどうかというと、8月1日現在302,655ショット(1回目186,561、2目目116,094)、となっています。
よくご指摘をいただく松戸市、柏市はどうなっているのでしょうか。いずれも各市の公式WEBから最新の数字を拾いました。

松戸市は251,763ショット(7月29日現在)、柏市は(7月26日現在)188,727ショットに比べて絶対数を大きく上回ります。また単純化するため全人口に対する接種率の概算を出してみましたが、船橋市47%(30万ショット/64万人)、松戸市51%(25万ショット/49万人) 柏市43%(19万ショット/44万人)となっています。


船橋市の個別接種方式に対して、集団接種のほうが良かったのではないか、個別接種でも予約を一元化するべきであったのではないかとご指摘をいただきます。当初多くの混乱があったのも事実であり、他市とは異なるやり方に不安を抱える方も多かったと思います。

個別接種と集団接種の割合
個別接種と集団接種の割合

現在、市が市議会健康福祉委員会に提出したデータによれば、直近1週間でも7割は個別接種での実施となっています。各クリニックでも慣れてきてスピードアップしているのになぜもっとワクチンを打たせてくれないのかとの声もありますし、逆に受付や苦情が大変なので集団接種に任せたいとの声もあり、医療機関ごとに状況が違います。

したがって、医療現場の声をしっかりと傾聴しながら、積極的に関わっている医療機関での個別接種と集団接種をハイブリッドで行っていくことがベターです。もちろん、若い人たちはかかりつけ医がいないケースが多いでしょうから、集団接種の比重を増やしていくということも考えるべきですが、個別接種の2回目接種が終わるタイミングやワクチンの供給量に応じて、慎重に考えるべきことだと思います。

そしてこれは何度も様々な方にお伝えしていますが、船橋市では集団接種会場での準備、スタッフともにそろっていますので、充分なワクチン供給量をいただければ、新規予約をいつでも再開できます。(7月末時点では8月中旬再開見込みとのことです。)

こちらの記事「自治体の熱意に国がブレーキをかけることはおかしい」という言葉が現場の関係者の声を代弁しています。
【主張】ワクチン不足 接種スピードを落とすな – 産経ニュース

※次回以降は接種券の送付事務、国と地方自治体の関係性、今後の展望について掲載します。

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この記事を書いた人

つまがり俊明

1977年6月生れ / 船橋市出身 三咲小→御滝中→鎌ヶ谷高校→明大→ベンチャー企業→総務省→神奈川県庁→松下政経塾→船橋市議会議員

~多様性を力に変えていく社会へ~ モットーは「着眼大局着手小局」